参加型キャンペーンはなぜ荒れやすい?企業施策の設計リスクを構造から整理

IT・デジタル

ICカードの後継キャラクターを決める投票企画が話題になりました。参加型の施策は盛り上がる一方で、賛否が広がりやすい側面もあります。

なぜ企業の「みんなで決めよう」という企画は、時に荒れた印象を持たれてしまうのでしょうか。

この記事では、参加型キャンペーンが荒れやすい構造を整理し、生活者視点と企業設計の両面から冷静に考えます。

何が起きているのか:参加型企画と賛否の広がり

ICカードの後継キャラクターを決める投票企画では、一般利用者が候補の中から選ぶ形式が採用されました。JR東日本の公式発表では、新キャラクターの決定プロセスとして投票形式が説明されています(出典:JR東日本 2026年2月19日プレスリリース)。

企業としては利用者参加型の施策により話題性を高め、ブランドへの関心を強める狙いがあったと考えられます。

一方で、投票の候補設定や告知方法について、意見が分かれる状況も見られました。支持の声がある一方で、「なぜこの形式なのか」「公共性の高いサービスで行う意味は何か」といった疑問も出ています。

ここで重要なのは、炎上というよりも「期待のズレ」が起きている可能性です。企業側は話題化や参加体験を重視して設計した施策でも、利用者の側は生活インフラとしての安定性や信頼性を重視します。

参加型企画そのものが問題なのではなく、公共性と娯楽性のバランスが難しいテーマであったことが、賛否の分かれ目になったと考えられます。

参加型施策が荒れやすい理由:三つの構造

参加型キャンペーンが賛否を生みやすいのは、偶然ではありません。構造的な要因があります。

第一に、「参加=期待値の上昇」です。投票や応募形式を採用すると、利用者は「自分の意思が反映される」と感じます。その分、結果が期待と異なる場合の落差も大きくなります。参加のハードルを下げるほど、期待の総量は増えます。

第二に、「勝敗構造の可視化」です。投票形式では必ず選ばれる側と選ばれない側が生まれます。勝敗が明確になる設計は、支持と不満を同時に発生させます。特にSNS上では、否定的な意見が拡散しやすい傾向があります。

第三に、「拡散速度の加速」です。総務省の「令和6年通信利用動向調査」によれば、SNSは幅広い年代で高い利用率を示しており(出典:総務省 令和6年通信利用動向調査)、情報が短時間で拡散する環境が整っています。参加型施策は投稿や共有を前提とすることが多く、その構造と強く結びついています。

つまり、参加型施策は本質的に「盛り上がり」と「摩擦」を同時に内包する設計です。荒れるかどうかは偶発的ではなく、設計段階である程度予測できるリスクとも言えます。

生活者視点で見ると何が問題になるのか

生活者の立場から見ると、参加型施策への反応は「好き・嫌い」だけでは説明できません。特にICカードのような日常インフラに近いサービスでは、利用者は無意識のうちに「安定」「信頼」「継続性」を期待しています。

日々使う交通系サービスは、娯楽よりも機能性が優先される領域です。そのため、企業側が「話題づくり」として設計した企画でも、利用者の側では「なぜ今それをするのか」という視点で評価されます。この評価軸の違いが、賛否を生みやすくします。

また、ブランド信頼との関係も無視できません。長年使われてきたサービスほど、「変えないこと」自体が価値になります。後継企画が登場すると、それは単なるキャラクター投票ではなく、「ブランドの方向性の変更」と受け取られることがあります。

私自身も、日常的に使うサービスが大きく変わると聞くと、まず利便性が損なわれないかを考えます。デザインの良し悪しよりも、使い勝手や安定性が気になります。この心理は多くの利用者に共通すると考えられます。

参加型施策が荒れる背景には、娯楽的な企画と公共的なサービスとの境界が曖昧になったことがあります。生活インフラに近い領域では、話題性よりも信頼の積み重ねが重視されやすいという前提を踏まえる必要があります。

企業はどう設計すべきか:期待値をどう扱うかが鍵

参加型施策そのものが悪いわけではありません。問題は「期待値の設計」にあります。

第一に、参加の範囲を明確にすることです。投票が最終決定なのか、参考意見なのかを事前に示すだけでも、受け止め方は変わります。曖昧な設計は、結果発表後の不満につながりやすいと考えられます。

第二に、目的の共有です。話題化なのか、利用者との接点強化なのか、ブランド刷新なのか。目的が明確であれば、生活者側も判断基準を持ちやすくなります。

第三に、公共性の高い領域では慎重さが求められることです。交通や決済など日常性の高いサービスでは、遊びの要素よりも安定性が重視されます。設計段階で「これは娯楽企画として受け取られるのか、それともサービス変更と受け取られるのか」を検討する必要があります。

参加型施策は拡散力が強い分、説明責任も同時に大きくなります。事前説明と事後説明のバランスをどう設計するかが、信頼維持の分かれ目になります。

今後も企業は参加型施策を続けると考えられます。その際は、盛り上がりだけでなく、生活者の期待構造を前提に設計することが重要です。

まとめ

参加型キャンペーンは、利用者との接点を広げる有効な手法です。しかし同時に、期待値の上昇、勝敗構造、拡散速度という三つの要素を内包しています。

特に生活インフラに近いサービスでは、娯楽性よりも安定性や信頼性が重視されます。設計段階でその前提を共有できるかどうかが、賛否の分かれ目になります。

炎上か成功かという二択ではなく、設計の問題として整理することが重要です。まずは「参加が何を意味するのか」を丁寧に考えることから始める必要があります。


参考資料

・JR東日本「Suicaに関するプレスリリース」(2026年2月19日)
https://www.jreast.co.jp/press/2025/20260219_ho01.pdf

・総務省「令和6年通信利用動向調査」
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01tsushin02_02000178.html

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