スーパーのからあげ競争が激化?家計目線で見る“惣菜主役化”の本当の理由

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最近、スーパーの惣菜売り場で「からあげ」が大きく展開されているのを見かけませんか。平台に山積みされ、味付けの種類が増え、揚げたてを強調するポップが目立つ。以前は惣菜コーナーの一商品という印象でしたが、今は売り場の中心に置かれることも珍しくありません。

単なる人気メニューの話ではありません。ここには、家計防衛意識の高まりや生活スタイルの変化が色濃く反映されています。

物価上昇が続くなかで、外食のハードルは確実に上がりました。一方で、すべてを自炊でまかなうのも現実的ではありません。特に揚げ物は、油の準備や後片付けを考えると心理的な負担が大きい料理です。

その“間”を埋めているのが、スーパーのからあげです。

家計を意識して買い物をするようになってから、売り場の見え方が少し変わりました。

なぜ今、からあげが強いのか

からあげは日本の家庭にとって非常に使い勝手の良いメニューです。子どもが食べやすく、弁当に入れやすく、夕食の主菜にもなり、翌日に回しても味が落ちにくい。冷凍保存もしやすい。

さらに鶏肉は牛肉や豚肉に比べて価格が安定しやすく、スーパー側も原価管理がしやすい食材です。大量調理に向き、味付けのバリエーションも展開しやすい。

つまり、

・売りやすい
・買いやすい
・失敗しにくい

この三拍子が揃っている商品なのです。

売り場で主役にしやすい理由が、構造的に備わっています。

家計目線で見るリアルな価格差

では、実際の家計にどの程度影響するのでしょうか。

仮にコンビニのからあげが1個120円とします。3人家族で一人3個ずつ購入すれば、9個で1,080円になります。

一方、スーパーで100gあたり160円の商品を400g購入した場合、約640円前後になるケースがあります。量や味付けの違いはありますが、総額で見ると差は明確です。

さらに、外食でからあげ定食を注文すれば、1人900円〜1,200円程度かかることも珍しくありません。家族3人なら3,000円前後になる可能性もあります。

比較すると、

外食 > コンビニ > スーパー惣菜

という価格構造が見えてきます。

物価が上がり、光熱費や食料品全体の価格がじわじわ上昇しているなかで、この差は日常的な選択に影響します。

私自身も「今日はもう作れない」と思った日に、以前は外食を選んでいましたが、最近はまず惣菜コーナーを見ます。そこで価格と量を見て、必要分だけ買う。この行動の変化は、特別な節約ではなく“自然な調整”に近い感覚です。

外食と自炊の“間”という新しい基準

重要なのは、からあげが「安いから売れている」という単純な話ではない点です。

・外食ほど高くない
・完全自炊ほど手間がかからない
・一定の満足感がある

このバランスが、今の生活環境に合っているのです。

共働き世帯が増え、時間の価値が上がっています。調理時間、片付け時間、買い出し時間。これらを含めた“総コスト”で判断する家庭が増えています。

スーパーのからあげは、単なる惣菜ではなく「時間を買う商品」でもあります。

ここまでが、売り場拡大の背景にある生活側の変化です。

業態間競争が売り場を変えている

からあげをめぐる競争は、スーパー同士だけではありません。

コンビニ、からあげ専門店、ドラッグストアまでが同じカテゴリーで勝負しています。それぞれの強みは明確です。

コンビニは「立地と即時性」。
専門店は「味とブランド」。
スーパーは「量と価格のバランス」。

たとえば単身世帯であれば、コンビニの手軽さは魅力的です。しかし家族単位になると、総額が重要になります。9個で1,000円を超える選択よりも、400gで600円台という選択のほうが現実的になることが多いのです。

スーパーはこの“家族単位の需要”を取り込みやすい立場にあります。そのため、売り場面積を拡大し、種類を増やし、主力商品として育てる戦略を取りやすいのです。

売り場づくりの工夫

最近の売り場を見ると、単にパックを並べるだけではありません。

・醤油味、塩味、にんにく強めなどの味展開
・「店内仕込み」「揚げたて」の強調
・大容量パックと少量パックの併売
・期間限定フレーバー

こうした工夫が増えています。

特に“揚げたて演出”は効果的です。惣菜売り場に香りが広がることで、予定になかった購入が発生しやすくなります。夕方のピークタイムに合わせて揚げ直す店舗もあります。

つまり、からあげは単なる惣菜ではなく、「集客装置」としても機能しているのです。

惣菜はなぜ強化されるのか

スーパーにとって、生鮮食品は価格競争が激しい分野です。他店との比較が容易で、特売で集客しても利益が出にくいことがあります。

一方、惣菜は調理や味付けで差別化でき、値段だけの勝負になりにくいカテゴリーです。一定の利益率を確保しやすい傾向があります。

からあげはその中でも回転率が高く、廃棄リスクが比較的低い商品です。味の好みが大きく外れにくく、売れ残りにくい。

スーパー側から見ると、

・原価管理がしやすい
・需要が安定している
・売り場演出がしやすい

という三つの利点があります。

その結果、惣菜売り場の“顔”として位置づけられやすいのです。

コスト上昇と今後の調整

ただし、揚げ物は油や電気代の影響を受けやすい商品です。エネルギーコストや人件費が上がれば、価格か量での調整が避けられません。

最近よく見られるのが、

・価格据え置きで量を減らす
・グラム単価を微調整する
・味付けや付加価値で単価を上げる

といった動きです。

一見すると変化が分かりにくいですが、家計にとってはじわじわ効いてきます。

だからこそ、グラム単価を見る習慣は重要になります。単価と総量を確認するだけでも、選択の精度は上がります。

ここまでが、売る側の構造です。

家庭構成別に見る“選ばれる理由”

ここで、家庭構成別に考えてみます。

① 単身世帯の場合

単身世帯では、量よりも手軽さが優先されがちです。コンビニの少量パックは無駄が出にくく、帰宅途中にすぐ買える利点があります。

ただし、週に数回利用するとなると総額は意外とかさみます。仮に1回500円を週2回使えば、月4,000円前後、年間では約48,000円になります。

スーパーでまとめ買いし、2食に分けて使えば、同じ満足度でも支出を抑えられる可能性があります。

② 夫婦のみ世帯の場合

夫婦世帯では、量と価格のバランスが重要になります。300〜400gのパックを購入し、夕食+翌日の一部に回すという使い方が現実的です。

外食を月4回から2回に減らし、代わりに惣菜を活用した場合、1回あたり1,500円の差が出るとすれば、月3,000円、年間36,000円程度の差になります。

特別な節約ではなく、「選択の微調整」で変わる金額です。

③ 子育て世帯の場合

子どもがいる家庭では、量が必要になります。専門店やコンビニで家族分をそろえると一度に1,500円〜2,000円になることもあります。

スーパーの大容量パックであれば、1,000円前後に抑えられるケースもあります。

さらに、翌日の弁当に回せる点は大きい。1食分を2食に分けることで、実質単価を下げることができます。

子育て世帯にとっては、「満足感」と「予算」の両立が重要です。からあげはその条件を満たしやすい商品と言えます。

年間視点で見るとどうなるか

仮に月に4回、からあげを利用するとします。

外食中心なら月12,000円前後、年間144,000円。
コンビニ中心なら月8,000円前後、年間96,000円。
スーパー惣菜中心なら月5,000〜6,000円前後、年間60,000〜72,000円。

もちろん単純比較はできませんが、選択によって年間数万円単位の差が生まれる可能性があります。

物価上昇が続くなかで、この差は無視できません。

今後の売り場はどう変わるか

今後も原材料やエネルギーコストの影響は続くでしょう。そのなかで、スーパーは

・付加価値型の商品展開
・量と価格の調整
・出来立て演出の強化

といった方向で競争を続けると考えられます。

消費者側も、価格だけでなく「量」「使い回し」「時間コスト」を含めた判断が増えていくでしょう。

からあげ売り場は、その縮図のような存在です。

まとめ

スーパーのからあげ競争は、単なる惣菜人気ではありません。

・物価上昇による家計防衛
・時間価値の重視
・業態間競争の激化
・惣菜カテゴリー強化戦略

これらが重なった結果です。

身近な売り場の変化は、生活環境の変化そのものでもあります。

何気なく手に取る惣菜にも、家計と小売の構造が反映されています。価格と量を一度立ち止まって見るだけでも、選択の質は変わります。

日常の買い物のなかにこそ、今の経済状況が表れているのです。

今夜の買い物で、グラム単価を一度見てみるだけでも、選び方は変わるかもしれません。

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